「未経験OKの歯科助手の募集を見つけたけど、本当に私にできるかな…?」
「歯科助手はきついって聞くけど、実際どうなんだろう…?」
新しい仕事を探しているとき、期待と同じくらい、不安もいっぱいですよね。
特に、人の健康に関わる医療の仕事となれば、その緊張はなおさらかもしれません。
歯科助手は、国家資格がなくても医療現場で人の役に立てる、とてもやりがいのある仕事です。
患者さんのお口の中に触れる業務はなく、未経験の方でも問題なく働けます。
しかし、その一方で、よく知らないまま「未経験でも大丈夫なら」と安易に飛び込んでしまい、理想と現実のギャップに苦しんでしまう方がいるのも事実です。
歯科助手の仕事が「きつい」と感じるか、「楽しくてやりがいがある」と感じるかは、あなたの能力や向き不向き以上に、『どの歯科医院で働くか』で、ほぼすべてが決まると言っても過言ではありません。
この記事では、これから歯科助手としての一歩を踏み出そうとしている方に向けて、
- 歯科助手の仕事が「きつい」と言われる理由
- 歯科助手の仕事内容
- 歯科助手が働きやすい職場のチェックリスト
をお伝えしていきます。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
歯科助手が「きつい」と言われる5つの理由

歯科助手の仕事がなぜ「きつい」言われるのか。
その理由には次のようなものがあります。
1、覚えることの多さに圧倒される
2、体力が必要
3、人間関係が難しい
4、コミュニケーション能力が必要
5、給料が良くない
具体的な内容を詳しく説明していきますね。
1. 想像以上!覚えることの多さに圧倒される
歯科助手の仕事は、患者さんをご案内したり、電話応対をしたりする受付業務から、使った器具を清潔に保つ滅菌・消毒作業、材料の在庫管理まで、広範囲にわたります。
歯科助手は法律上、患者さんの口の中を触ることができませんが、歯科医師や歯科衛生士が行う処置をとなりでサポートするのも大事な業務です。
歯科の専門用語はとても多く、最初は、まるで呪文のように聞こえる専門用語のオンパレードに、頭がパンクしそうになるかもしれません。
- 「CR(シーアール)充填お願いします」(白い詰め物をする治療のこと)
- 「次は根治(こんち)だから、ファイル用意しといて」(歯の根っこの治療のこと)
- 「アルジネート練ってください」(歯型をとるピンクの粘土のような材料のこと)
こうした言葉が日常的に飛び交う中で、何十、何百とある器具や材料の名前、そして治療の流れを一つひとつ覚えていかなくてはなりません。
器具や材料の種類が多いため、どこに何があるかを覚えるのにも一苦労です。
もちろん、覚えてしまえば難しい作業は多くないですし、毎日歯科用語に触れることで自然に吸収できることもあります。
ですが、十分な教育体制がない職場では、この「覚えるまで」の期間が本当に辛く、質問したくても「忙しそうで聞けない…」という状況に陥り、自信をなくして挫折してしまう方もいるのです。
2. 実は体力勝負!身体的な負担も
歯科助手の仕事は体力が必要です。
まず、受付以外の業務では一日中ほぼ立ちっぱなしです。
長い治療になると、1時間以上同じ場所で、しかも少し前かがみの姿勢でアシスタントを続けることも珍しくありません。
集中力が途切れると、器具を落としたり、先生との呼吸が合わなくなったりするため、常に気を張っている必要があります。
これが、じわじわと足腰や首肩に負担をかけます。
さらに、診療の合間には、患者さんのご案内、治療後の片付け、次の治療の準備…と、常に院内を動き回っています。特に予約が詰まっている時間帯は、「トイレに行く暇もない」なんて人も多いです。
忙しい医院では、のんびり座って作業をする、という時間はほとんどないと思った方が良いでしょう。
「デスクワークより体を動かす方が好き」という方でも、想像以上の運動量と立ち仕事の連続に、1日終わるとグッタリ…となってしまうかもしれません。
3. 最も大きな壁?「人間関係」の難しさ
歯科助手が1年以内に辞める割合は30%を超えるという報告もあり、辞めたい理由として多いのが「人間関係」の悩みです。
個人経営の歯科医院は、院長先生をトップとし、スタッフ数5人程度のところが多く、この「小さなコミュニティ」が人間関係を良くも悪くも濃密にします。
気の合うスタッフに恵まれれば、温かい雰囲気で楽しく働けます。
しかし、一人でも苦手な先輩や同僚がいた場合、その逃げ場のなさは大きなストレスとなりかねません。
特に、院長先生との相性は重要です。治療中は常に隣にいる存在だからこそ、院長の性格が職場の空気を大きく左右します。
残念ながら、治療がスムーズに進まないイライラを、アシスタントである歯科助手にぶつけてくる院長もいます。
高圧的な態度をとられて精神的に疲れてしまった。という理由で退職する人も少なくありません。
4. 「気配り」が最重要。求められるコミュニケーション能力
「人と話すのは得意じゃないから、黙々と作業する歯科助手なら…」もし、そう考えているなら、少し注意が必要です。
歯科助手の仕事は、コミュニケーション能力が求められます。
まず、患者さんとのコミュニケーション。
歯科医院には、「痛い」「怖い」といった不安を抱えている方が多く来院します。
受付での優しい笑顔や声かけが、患者さんの心を軽くし、医院全体の雰囲気をやわらげます。
また、スタッフとのコミュニケーションも大切です。
治療は、院長、歯科衛生士、そして歯科助手のチームプレーで成り立っています。
院長が次に何を求めているかを先読みし、絶妙なタイミングで器具を渡す。歯科衛生士と患者さんの情報を共有し、スムーズな診療をサポートする。
そのためには、「言われたことだけやる」のではなく、常に周りに気を配り、声を掛け合うことが不可欠です。
大切なのは、おしゃべりが上手なことではなく、相手を思いやり、丁寧に対応しようとする「気持ち」です。
先まわりして人の気持ちよみとり、困っている人がいないかと常に全体を見わたせるような気配りができる人は、歯科助手に向いています。
5. 「こんなに大変なのに…」お給料とのバランス
最後に、現実的なお給料の話です。
歯科助手は資格がなくてもなれる職種のため、他の医療系専門職(歯科衛生士など)と比較すると、給与水準は低めの傾向にあります。
ここまでお話ししてきたように、歯科助手の仕事は、覚えることも多く、体力的にも精神的にも決して楽な仕事ではありません。
多岐にわたる業務内容と求められるスキルの高さを考えると、「これだけ頑張っているのに、お給料が割に合わない…」と感じてしまう方がいるのも、無理はないかもしれません。
厚生労働省の職業情報サイトjog tagによると、歯科助手の平均年収は322.9万円、パートの平均時給は1,281円です。
地方ではさらに低い傾向があり、年収300万円に届かなかったり、時給が最低賃金と同程度という医院もあります。
一方、歯科衛生士の平均年収は405.6万円、パートの平均時給は1970円となっています。

給与は地域差や医院によって差があります。私の住む地方では、歯科助手1,100円、歯科衛生士1300円が相場ですね。
働きたい地域の給与相場は以下のような求人サイトで確認しておきましょう。
医療・介護・福祉の求人探しは【ジョブソエル】
歯科助手の給料が安いというのはあくまで一般的な傾向です。
医院によっては、経験や能力をきちんと評価して昇給させてくれたり、ボーナスや各種手当が充実していたりするところもたくさんあります。
だからこそ、職場を探す際には、目先の月給だけでなく、長期的に見てきちんと報われる給与体系になっているかを、しっかりと確認することが大切です。
『職場選び』で決まる|後悔しないための徹底チェックリスト


ここまで読んで、「やっぱり私には無理かも…」と不安を大きくしてしまったかもしれません。
でも、ここからが一番大切な話です。
これまでお話ししてきた「きつい理由」は、すべて「職場環境」に原因があるものです。
つまり、スタッフを大切にしてくれる「良い職場」を選びさえすれば、これらの悩みはほとんど解消できるのです。
未経験から挑戦する方にとって、職場選びで今後の歯科助手としてのキャリアが決まると言っても過言ではありません。
焦って決めず、自分自身を守るために、以下のポイントを徹底的にチェックしてください。
チェックポイント1:責任もって育ててくれる教育体制があるか?
未経験者にとって、最も重要なポイントは、教育体制があるかどうかです。
「未経験者歓迎」という言葉は、「とにかく人が欲しい!」の裏返しである可能性もあります。
本当に育てる覚悟を持って歓迎してくれているのか、見極めが大事です。
《最悪の職場》
- 「見て覚えて」「マニュアルなんてない」と言われる。
- 忙しすぎて誰も質問に答えてくれない。空気を読んで聞けない。
- 初日からいきなり難しいアシスタントにつかされ、ミスをしては怒られる。
- 結果、「自分は仕事ができないんだ…」と自信を失い、辞めてしまう。
《最高の職場》
- 写真付きの分かりやすい業務マニュアルが完備されている。
- 入社後の研修スケジュールが決まっており、一つひとつ段階を踏んで教えてくれる。
- 最初の1ヶ月は、教育係の先輩がマンツーマンでついてくれる(OJT制度)。
- 「わからないことがあったら、いつでも何度でも聞いてね」という温かい雰囲気がある。
【面接での質問】
面接は、職場を見極める場でもあります。遠慮なく質問してみましょう
- 「未経験からのスタートで少し不安があるのですが、入社後の教育体制ついて、具体的に教えていただけますか?」
- 「最初のうちは、主にどなたがご指導してくださるご予定でしょうか?」
- 「業務マニュアルなどはございますか?」
これらの質問に、面倒くさそうな顔をせず、具体的に、そして歓迎する雰囲気で答えてくれたら、未経験からでも大切に育ててくれる職場の可能性が高いです。
歯科助手の求人倍率は2.98(令和5年)。求職者1名に対しておよそ3件の求人があることを意味します。
教育体制のある職場で一度スキルをつけてしまえば、今後歯科医院に転職するときにも大きな強みになります。
チェックポイント2:職場の「空気」は最大の判断材料!人間関係を見極める
一日の大半を過ごす場所だからこそ、職場の雰囲気、特に人間関係はなによりも大切です。
求人票の「アットホームな職場です!」という言葉だけでは、本当のところはわかりません。
【見極めのヒント】
- 院長の人柄: 面接で、あなたの話を最後までしっかり聞いてくれますか?威圧的な態度や、話をさえぎるようなことはありませんか?院長の人柄が、職場の空気を作ります。
- スタッフの表情と言葉遣い: 面接や見学の際にすれ違うスタッフは、笑顔で挨拶してくれますか?スタッフ同士の会話は、穏やかですか?患者さんへの言葉遣いは丁寧ですか?
- 院長のスタッフへの態度: 院長がスタッフに指示を出すときの口調を、それとなく観察してみましょう。敬意や配慮が感じられますか?「ありがとう」や「お願いします」の言葉はありますか?
【最強の判断材料は「職場見学」】
必ず職場見学をお願いしましょう。「応募の前に、一度院内の雰囲気を見学させていただくことは可能でしょうか?」とお願いしてみてください。快く受け入れてくれる職場は、それだけ自分たちの環境に自信がある証拠です。
ただし、見学の人がくる日だけ良く見せる医院があるのも事実です。
見学では、治療中の様子だけでなく、スタッフが準備や片付けをしているバックヤードの雰囲気も感じてみてください。働くスタッフの本音が見えてくることがあります。



「先生やさしいですか?」とスタッフに直球で聞く見学の方もいます。聞きやすそうな方がいたらコッソリ聞いてみるのもいいかもしれません。
チェックポイント3:スタッフの人数と構成は、働きやすさに直結する
スタッフの人数は、休みやすさや一人ひとりの業務負担に大きく影響します。
- 少人数(1〜5名程度)の医院
- メリット:家族的な雰囲気で、全員の顔が見える関係性を築きやすい。
- デメリット:一人ひとりの責任が重く、急な休みが取りづらい。人間関係がこじれると逃げ場がない。教育に割けるための人手がない可能性がある。
- 中規模以上(10名〜)の医院
- メリット:スタッフの数に余裕があり、休みやシフトの融通が利きやすい。教育係を専任でつけてくれるなど、体制が整っていることが多い。
- デメリット:スタッフが多い分、コミュニケーションが薄くなったり、派閥ができたりする可能性もゼロではない。
未経験の場合は、ある程度の人数がいる医院の方が安心してスタートを切れるかもしれません。
ある程度の人数とは、歯科医院の規模や患者さんの人数にもよりますが、治療台の数と同じだけスタッフの人数がいるほうが良いでしょう。
たとえば、4台の治療台が常時うまっている医院であれば、4名はスタッフがいることが理想です。
1日に来院する患者数が30人以上の場合、従業員(歯科衛生士+歯科助手)が4人以下だとバタバタと忙しい医院である可能性があります。
チェックポイント4:医院の方針や理念は、あなたと合っているか?
一口に歯科医院と言っても、その専門性や方針はさまざまです。
- 虫歯や歯周病の治療がメインの一般歯科
- 子供の患者さんが中心の小児歯科
- 歯並びを治す矯正歯科
- 歯の美しさを追求する審美歯科
- 虫歯にならないための予防に力を入れる予防歯科
例えば、子供が好きなら小児歯科、美容に興味があるなら審美歯科、といったように、自分の興味と医院の方針が合っていると、仕事へのモチベーションも大きく変わってきます。
医院のホームページをじっくり読み込んで、どんな治療に力を入れているのか、どんな想いで患者さんと向き合っているのかを調べてみましょう。
患者さん1人の予約時間をたっぷりとり、コミュニケーションを大切にする医院や、反対に効率よく多くの患者さんを診るスタイルの医院など院長の方針によって忙しさも異なります。
人と関わるのが好き、テキパキと動くのが得意、など普段の自分に合った職場を選べると働きやすさはグンと上がります。
歯科助手が「きつい」かどうかは、あなたと職場の相性がすべて
歯科助手は未経験で働くことも十分可能ですが、決して楽な仕事ではありません。
覚えることは多いし、体力も気配りも必要です。
歯科医院は少人数で働くことが多く、一人ひとりとの関わりが密接になりがちなため、院長やスタッフの人柄で働きやすさが大きく変わります。
求人票の給与や勤務時間のみで判断するのではなく、面接や見学時に、職場の空気感が自分に合っているかどうかをよく確認しましょう。
自分に合った職場にさえ出会えれば、歯科助手は患者さんやスタッフからたくさんの「ありがとう」をもらえるとてもやりがいのある仕事です。
「大変そうだけど、やっぱりやってみたい」。
もしそう感じているのなら、その気持ちを大切にしてぜひ挑戦してみてください。
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